11月21日放送「医師と経営学について」
2021年11月21日(日)
11月21日放送「医師と経営学について」
陶:今日は、ゲストをお招きしましたよ。愛心メモリアル病院の石川康暢(いしかわやすのぶ)先生です。おはようございます。
石:おはようございます。
陶・山:よろしくお願いします。
陶:石川先生は私の先輩です。腎臓、透析、腎移植、栄養の分野で専門医としてご活躍ですが、さらに産業医として企業の作業管理の安全管理もされています。なんと近年では経営管理学も学び、MBAも取得されまして、まさに多分野で活躍されている先生なんです。今日は本当にお忙しい中ありがとうございます。
石:ありがとうございます。陶子先生は先ほど「先輩」と言っていたんですけれども実際は大学院生の入学年度が一緒なので、まぁ、同期ですね、一緒に働いていました。私の専門、透析に関しては、特に陶子先生のお父さんである、史生先生から出張の度に多く教えていただいて。ですので、実際は面と向かって話をしてても、とにかく後ろにいるお父様を考えてですね、頭が上がらない状態ですね(笑)現在は勤めている病院とは別に、陶子先生のH・N・メディックを微力ながらサポートのために、定期的に出張しているといった関係性になってますね。
山:それでは早速まいりましょう!「Dr.トーコのラジオ診療室」石川先生、今日のテーマは?
石:「医師と経営学について」です。
山:「医師と経営学」今まで陶子先生とお話してきて、病院の経営って本当に大変なんだなあと感じていました。
陶:石川先生は、小樽商科大学のビジネススクールに進学なさっています。これはイエール大学留学のあとですよね?
石:そうですね。ビジネススクールは今年(2022年)の3月で修了ですね。
陶:経営学の話の前に地域医療のお話を。石川先生、実は北海道の地方へ出かけて専門治療を行ってらっしゃるんですよね。
石:基本的は、愛心メモリアル病院で外来診療を中心にやっているんですけれども、それとは別に道内の地方にたびたび出張診療をしています。その理由としては、「腎臓内科医」が少ないからなんです。北海道は実は地域別でいうと、人口当たりの専門医の数が最低なんですよね。具体的な数字でいうと、関東だと10万人患者さんにあたり、5.14人なんですが、北海道は2.19人と半分以下なんですよね。北海道は広いのでお医者さんも患者さんも移動が大変です。とすると、もっと医師の数は多くてもいいはずなんですけれども、圧倒的に足りないってことなんですね。しかもその少ない専門医も大体、札幌と旭川に集中しています。ですので私は地域に専門医療を届けるために自分の外来だけではなくて、出張に行って専門医療も提供しようと考えながら働いているというわけです。
陶:わたし、そう伺うと「専門医療を地方へお届け!」とでもいうような、出前のようなイメージを想像してしまいますけれど。先生はもともと地域の専門医療への関心が高かったということですか?
石:そうですね。もともと出身が青森なものですから。昔から地域医療への関心が高かったです。ただ、最初札幌で勤めていたときに、札幌で働くこと自体がステータス、エリートだと感じていた時期もあって。最初こそ、そう思っていたものですけれど、北大病院に勤めていたときに地方出張を経験しまして。地域医療というのは大変だけれどもやりがいのある仕事だと再認識しました。ただ、自分自身に子どもができるとこんどは子供の教育への配慮などもあって自分主導で動けなくなって、今ではまた札幌を拠点にしつつ、地方へは出張するといった形態を取っています。そういった「地方出張」をすることについても、愛心メモリアル病院から「出張に行っていいよ」というように言っていただけて、いわば自由に働ける環境を提供して頂いており、とても感謝しています。
陶:具体的には、ご自身でどんな環境作りをされてらっしゃるんですか。
石:「単発の診療」という形のみで出張に行きますと、患者さんには何がしかの診療した事実は残ることにはなるんですけれども、ただ、それで終わっちゃうんですよね。ですので、「何が自分でできるか」っていうことを考えまして。出張先のその場でスタッフとかほかの先生(腎臓が専門ではない先生)を巻き込んでカンファレンスしたりしています。そのほか、最新の論文とか、講演会からの知見ですとか、そういったものを伝えたりしてスタッフ教育を行っています。そうすることによって、出張先に自分がいなくてもスタッフが「こういうことあったよね」っていうように思い出して、そこから何かを考えてもらえるようになってくれればと思っています。あとは「僕(石川)だったらこういうふうに考えるかな」というようにスタッフに想像してもらえるように、皆の思考の経路を整える、いわば環境を整えるっていうことを第二の仕事にしています。
陶:この先生の言葉に心を打ち抜かれたんですが、私も「自分がいなくても」ってすごく大切な意識だと思っているんです。H・N・メディックの職員にも、時々「頭の中に私(遠藤)を飼ってね」と冗談めかして話したことがあります。脳内陶子と対話してもらったり・・・ということを考えます。
石:同じような意味合いですね。
陶:今日の主題のテーマ「医師と経営学」に移りますけれども、先生が経営学を本格的に学ばれてらっしゃる、その理由や動機はなんでしょう?
石:日本では、病院とか医師が特に「経営」とかっていうと、「金に汚い」とか世間一般の人からタブー視されている部分があるんですね。具体的にいうと「患者さんを金として見てる」とか。あと、「命を金に換算してる」ってことを言われることもあると思います。
陶:先生、そもそも経営の意味とは何だとお考えですか?
石:まずはその言葉のことなんですけれども「経営学」の経営っていう意味は、ビジョンに沿って組織が活動することですね。ですのでお金を稼ぐことじゃないんです。
陶:おっしゃる通りです。
石:あと、それを管理する「経営管理」というのはそれをマネジメントするということですね。要はそういった活動を支えるために管理することなんですけれども、経営という言葉は「金もうけ」としてひとり歩きししてしまってるような感じもあって非常に残念に思います。
陶:おっしゃるとおりだと思います。先生にそうおっしゃっていただけると、本当にありがたいです。
山:MBAって、よく耳にしますが、どういう資格なのですか?
石:MBAとは経営管理修士、経営学修士のことです。
修士なので2年の大学院修了で授与される学位、それが経営管理や経営学についてということです。
山:MBAに関心をもったのは何がきっかけですか?
石:アメリカのイエール大学への留学中に同僚がMBAの学校に通っていたことがきっかけです。「MBAって何だろう」と興味を持ち、調べるうちに日本の医療経営においてもその知識が必要だと感じました。特に自分の中でのコンセプトとしては2つあります。①外部環境に柔軟に対応して自分の仕事を貫くため、②専門医療と医療経営を組み合わせたオリジナルな存在になること、です。
陶:なるほど、オリジナルな存在ですか。
石:スタンフォード大学のジェームス・マーチ先生の「知の探索」という理論があります。この理論では、イノベーションを起こすには、なるべく自分から離れた遠くの知を幅広く探し、今自分の持っている知と新しく組み合わせることがその第一歩というという概念です。その理論から自分が他の医師との差別化の要因を作るためには、全く異なる分野で医療に活かせる 能力を身に着けることが大事だろうと考えました。
陶:全く異なる分野での「学び」ということですが、自分の中でいろんな知識を咀嚼して出力するという作業は、医師に限らず、いろんな職種で大事なことかなと思います。よく「学ぶ人は石ころからでも学ぶ」と言いますが、本当にそういう視点で生きるというのは大事で、先生が今このアイデアを披露してくださって、頭が飛んでいくくらいウンウンとうなづいてしまいました。(笑)
陶:では、先生。小樽商科大学のビジネススクールのことを教えていただけますか?
石:小樽商大のビジネススクールは、2004年に開設された北海道唯一のMBAを与える大学院です。MBAというと金融関係の人が多いのかなというイメージですが、最近だと医療関係者が2割程度を占めています。私の同期には他に医師が2人、看護師、臨床検査技師や放射線技師もいました。医療の世界だと、職種は違うが結局は医療に携わる集団であるため、どこか同じ思考回路になりがちですが、このような多職種の集合体の中で学んでいると全く視点が違う発想が飛び交うため非常に勉強になりましたし、発想の転換もできるようになりましたね。
山:皆さん、やっぱり起業とかを目指して、ギラギラした感じなんですか?
石:ビジネススクールというとそういう人が集まるイメージがあるかもしれません。私も同期に会うまではそのようなことを考えていました。
ところがそんなギラギラ感は感じなかったですね。そこで私はみんながどのような目的で進学しているのかと興味を持ち、入学動機などのアンケート調査をしてみました。すると、入学に関しては「組織改善のため」ということが多かったんですね。ひょっとすると本州の方の多くのビジネススクールでは起業のためというギラギラした人が多いのかもしれませんが、北海道では自分が所属している組織を良くしていきたいと思う人が進学しているということが理解できました。なので非常にのびのびとしてマイルドな環境の中で2年間楽しむことができました。もし興味があるようなら「小樽商科大学 ビジネススクール」で検索すると出てくるので見てほしいですね。
陶:発想の転換ができるようになる、というのが印象深かったです。発想の転換って、実はやろうと思ってもなかなかできないですよね。発想が転換できそうな場所にまず自分の身を置くことも大事なのかなと、今日のお話を伺っていて学びました。
山:今日は、愛心メモリアル病院の石川康暢(いしかわやすのぶ)先生に、「医師と経営学」というテーマでお話しいただきました。石川先生、ありがとうございました。
石・陶:ありがとうございました。
近:ありがとうございました。
石:おはようございます。
陶・山:よろしくお願いします。
陶:石川先生は私の先輩です。腎臓、透析、腎移植、栄養の分野で専門医としてご活躍ですが、さらに産業医として企業の作業管理の安全管理もされています。なんと近年では経営管理学も学び、MBAも取得されまして、まさに多分野で活躍されている先生なんです。今日は本当にお忙しい中ありがとうございます。
石:ありがとうございます。陶子先生は先ほど「先輩」と言っていたんですけれども実際は大学院生の入学年度が一緒なので、まぁ、同期ですね、一緒に働いていました。私の専門、透析に関しては、特に陶子先生のお父さんである、史生先生から出張の度に多く教えていただいて。ですので、実際は面と向かって話をしてても、とにかく後ろにいるお父様を考えてですね、頭が上がらない状態ですね(笑)現在は勤めている病院とは別に、陶子先生のH・N・メディックを微力ながらサポートのために、定期的に出張しているといった関係性になってますね。
山:それでは早速まいりましょう!「Dr.トーコのラジオ診療室」石川先生、今日のテーマは?
石:「医師と経営学について」です。
山:「医師と経営学」今まで陶子先生とお話してきて、病院の経営って本当に大変なんだなあと感じていました。
陶:石川先生は、小樽商科大学のビジネススクールに進学なさっています。これはイエール大学留学のあとですよね?
石:そうですね。ビジネススクールは今年(2022年)の3月で修了ですね。
陶:経営学の話の前に地域医療のお話を。石川先生、実は北海道の地方へ出かけて専門治療を行ってらっしゃるんですよね。
石:基本的は、愛心メモリアル病院で外来診療を中心にやっているんですけれども、それとは別に道内の地方にたびたび出張診療をしています。その理由としては、「腎臓内科医」が少ないからなんです。北海道は実は地域別でいうと、人口当たりの専門医の数が最低なんですよね。具体的な数字でいうと、関東だと10万人患者さんにあたり、5.14人なんですが、北海道は2.19人と半分以下なんですよね。北海道は広いのでお医者さんも患者さんも移動が大変です。とすると、もっと医師の数は多くてもいいはずなんですけれども、圧倒的に足りないってことなんですね。しかもその少ない専門医も大体、札幌と旭川に集中しています。ですので私は地域に専門医療を届けるために自分の外来だけではなくて、出張に行って専門医療も提供しようと考えながら働いているというわけです。
陶:わたし、そう伺うと「専門医療を地方へお届け!」とでもいうような、出前のようなイメージを想像してしまいますけれど。先生はもともと地域の専門医療への関心が高かったということですか?
石:そうですね。もともと出身が青森なものですから。昔から地域医療への関心が高かったです。ただ、最初札幌で勤めていたときに、札幌で働くこと自体がステータス、エリートだと感じていた時期もあって。最初こそ、そう思っていたものですけれど、北大病院に勤めていたときに地方出張を経験しまして。地域医療というのは大変だけれどもやりがいのある仕事だと再認識しました。ただ、自分自身に子どもができるとこんどは子供の教育への配慮などもあって自分主導で動けなくなって、今ではまた札幌を拠点にしつつ、地方へは出張するといった形態を取っています。そういった「地方出張」をすることについても、愛心メモリアル病院から「出張に行っていいよ」というように言っていただけて、いわば自由に働ける環境を提供して頂いており、とても感謝しています。
陶:具体的には、ご自身でどんな環境作りをされてらっしゃるんですか。
石:「単発の診療」という形のみで出張に行きますと、患者さんには何がしかの診療した事実は残ることにはなるんですけれども、ただ、それで終わっちゃうんですよね。ですので、「何が自分でできるか」っていうことを考えまして。出張先のその場でスタッフとかほかの先生(腎臓が専門ではない先生)を巻き込んでカンファレンスしたりしています。そのほか、最新の論文とか、講演会からの知見ですとか、そういったものを伝えたりしてスタッフ教育を行っています。そうすることによって、出張先に自分がいなくてもスタッフが「こういうことあったよね」っていうように思い出して、そこから何かを考えてもらえるようになってくれればと思っています。あとは「僕(石川)だったらこういうふうに考えるかな」というようにスタッフに想像してもらえるように、皆の思考の経路を整える、いわば環境を整えるっていうことを第二の仕事にしています。
陶:この先生の言葉に心を打ち抜かれたんですが、私も「自分がいなくても」ってすごく大切な意識だと思っているんです。H・N・メディックの職員にも、時々「頭の中に私(遠藤)を飼ってね」と冗談めかして話したことがあります。脳内陶子と対話してもらったり・・・ということを考えます。
石:同じような意味合いですね。
陶:今日の主題のテーマ「医師と経営学」に移りますけれども、先生が経営学を本格的に学ばれてらっしゃる、その理由や動機はなんでしょう?
石:日本では、病院とか医師が特に「経営」とかっていうと、「金に汚い」とか世間一般の人からタブー視されている部分があるんですね。具体的にいうと「患者さんを金として見てる」とか。あと、「命を金に換算してる」ってことを言われることもあると思います。
陶:先生、そもそも経営の意味とは何だとお考えですか?
石:まずはその言葉のことなんですけれども「経営学」の経営っていう意味は、ビジョンに沿って組織が活動することですね。ですのでお金を稼ぐことじゃないんです。
陶:おっしゃる通りです。
石:あと、それを管理する「経営管理」というのはそれをマネジメントするということですね。要はそういった活動を支えるために管理することなんですけれども、経営という言葉は「金もうけ」としてひとり歩きししてしまってるような感じもあって非常に残念に思います。
陶:おっしゃるとおりだと思います。先生にそうおっしゃっていただけると、本当にありがたいです。
山:MBAって、よく耳にしますが、どういう資格なのですか?
石:MBAとは経営管理修士、経営学修士のことです。
修士なので2年の大学院修了で授与される学位、それが経営管理や経営学についてということです。
山:MBAに関心をもったのは何がきっかけですか?
石:アメリカのイエール大学への留学中に同僚がMBAの学校に通っていたことがきっかけです。「MBAって何だろう」と興味を持ち、調べるうちに日本の医療経営においてもその知識が必要だと感じました。特に自分の中でのコンセプトとしては2つあります。①外部環境に柔軟に対応して自分の仕事を貫くため、②専門医療と医療経営を組み合わせたオリジナルな存在になること、です。
陶:なるほど、オリジナルな存在ですか。
石:スタンフォード大学のジェームス・マーチ先生の「知の探索」という理論があります。この理論では、イノベーションを起こすには、なるべく自分から離れた遠くの知を幅広く探し、今自分の持っている知と新しく組み合わせることがその第一歩というという概念です。その理論から自分が他の医師との差別化の要因を作るためには、全く異なる分野で医療に活かせる 能力を身に着けることが大事だろうと考えました。
陶:全く異なる分野での「学び」ということですが、自分の中でいろんな知識を咀嚼して出力するという作業は、医師に限らず、いろんな職種で大事なことかなと思います。よく「学ぶ人は石ころからでも学ぶ」と言いますが、本当にそういう視点で生きるというのは大事で、先生が今このアイデアを披露してくださって、頭が飛んでいくくらいウンウンとうなづいてしまいました。(笑)
陶:では、先生。小樽商科大学のビジネススクールのことを教えていただけますか?
石:小樽商大のビジネススクールは、2004年に開設された北海道唯一のMBAを与える大学院です。MBAというと金融関係の人が多いのかなというイメージですが、最近だと医療関係者が2割程度を占めています。私の同期には他に医師が2人、看護師、臨床検査技師や放射線技師もいました。医療の世界だと、職種は違うが結局は医療に携わる集団であるため、どこか同じ思考回路になりがちですが、このような多職種の集合体の中で学んでいると全く視点が違う発想が飛び交うため非常に勉強になりましたし、発想の転換もできるようになりましたね。
山:皆さん、やっぱり起業とかを目指して、ギラギラした感じなんですか?
石:ビジネススクールというとそういう人が集まるイメージがあるかもしれません。私も同期に会うまではそのようなことを考えていました。
ところがそんなギラギラ感は感じなかったですね。そこで私はみんながどのような目的で進学しているのかと興味を持ち、入学動機などのアンケート調査をしてみました。すると、入学に関しては「組織改善のため」ということが多かったんですね。ひょっとすると本州の方の多くのビジネススクールでは起業のためというギラギラした人が多いのかもしれませんが、北海道では自分が所属している組織を良くしていきたいと思う人が進学しているということが理解できました。なので非常にのびのびとしてマイルドな環境の中で2年間楽しむことができました。もし興味があるようなら「小樽商科大学 ビジネススクール」で検索すると出てくるので見てほしいですね。
陶:発想の転換ができるようになる、というのが印象深かったです。発想の転換って、実はやろうと思ってもなかなかできないですよね。発想が転換できそうな場所にまず自分の身を置くことも大事なのかなと、今日のお話を伺っていて学びました。
山:今日は、愛心メモリアル病院の石川康暢(いしかわやすのぶ)先生に、「医師と経営学」というテーマでお話しいただきました。石川先生、ありがとうございました。
石・陶:ありがとうございました。
近:ありがとうございました。