4月18日放送「臨床工学技士とはなんぞや」
2021年4月25日(日)
4月18日放送「臨床工学技士とはなんぞや」
陶:今週と来週はゲストお迎えしてお送りしますよ。H・N・メディックの医療技術部の内海芳淳(よしあつ)部長です。おはようございます。
内:おはようございます。
山:おはようございます。
陶:内海さんは、48歳男性で「臨床工学技士」の長としてH・N・メディックで働いてくれています。臨床工学技士というのは、現代の医療に欠かせない医療機器のスペシャリストなんです。透析医療に関していえば、彼らがいないと、現実問題として我々医師は透析をすることができません。私たち医師も細かくはわからないことを臨床工学技士さんが理解して教えてくださることも沢山あるんです。内海さんはとにかく優しくて、「医師のくせにわからないなんて」なんて絶対言いません(笑)!
山:見るからにお優しそうな・・・
陶:年に1回くらい怒る・・・というくらいですね。あと、メカニック的な逸話がありまして。当院の「パルスオキシメーター」というものが壊れたことがあるんですね。パルスオキシメーターというのは指先にクリップのようにして、血中の酸素濃度をはかるものなので、精度が大事なんです。私はもうこれは使えないし直せないなと思いまして、内海さんに渡して「これ壊れたんだけど、これ捨てて新しいの買いましょうか」って言ったんですね。そうしたら内海さん、「分解していいですか?」って。
山:ブンカイですか!?
陶:そう。分解してどうするんですか?って聞いたら、「ちゃんと、こういうものの構造は知っておきたい。何かに応用できるかもしれないですかから。」って。まさにプロフェッショナルですよ。ということで、今日はそんな内海さんをお連れしました。
山:ということで、今回のテーマは?
陶:臨床工学技士とは何ぞや?というお話です。内海さん、お願いします。
内:はい。よろしくお願いします。病院の中には医師、看護師をはじめ、エックス線を扱う診療放射線技師、血液や細菌検査、心電図や脳波などの検査を行う臨床検査技師、リハビリテーションを行う理学療法士などたくさんの職種の方が働いています。このような医療従事者をメディカルスタッフと称します。臨床工学技士も病院で働くメディカルスタッフの職種で、CE(clinical-engineer)と呼ばれています。
山:臨床検査技師、という名称はよく聞きますが、臨床工学技士というお仕事は初めて
聞いたような気がします。
陶:そうですよね。医療機器は日々進歩していますし、臨床工学技士さんには工学の専門知識を活かして最新の医療機器を駆使して機器の安全確保と有効性維持の担い手としてチーム医療に貢献してもらっています。なくてなならないポジションなんです。
山:カッコいいですね・・・では、その臨床工学技士とは具体的にどのようなことをされているのでしょうか?
内:1987年に臨床工学技士法が制定されたのですが、この中で『医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作、および保守点検を行うことを業とする』と定められています。これが基本となります。
山:生命維持管理装置、ですか…
内:はい。生命維持管理装置とは、人の呼吸、循環、または代謝の機能の一部を代替することが目的とされる装置と定義されていて、具体的には、人工心肺装置や血液浄化装置(これが透析の機械ですね)、ペースメーカーや大動脈バルーンパンピング装置、人工呼吸器、除細動装置などになります。
陶:物騒な感じの言葉がたくさん並んだと思うんですけど、生命維持管理装置、要は無いと死んじゃうような、これがあるから生きていられる状態を生み出すことができる機械なんですよね。そういったことを専門にやるということで、人の命に近いところにいる瞬間も多いかもしれません。
内:制度が施行され30年あまりたった今では、実際に操作する医療機器や保守点検を行う医療機器は多岐にわたります。そのほかにも、高気圧酸素治療機、心臓カテーテル治療にかかわる機器や、内視鏡、電気メス、輸液ポンプ、シリンジポンプ、と、これらは、勤務する病院や診療科によって従事する内容が変わってきます。
山:人工透析を行う陶子先生の病院では、本当に欠かせないお仕事ですよね。まさに命を支える機器ばかりですもんね。
陶:冒頭に私が「臨床工学技士さんがいないと何もできません」と言ったのはまさしくこのことで、医療技術の進歩にともなって医療機器の性能は日々高度に、そして複雑になっています。内海さんのような臨床工学技士はさまざまな医療機器に関する知識を持って、スムーズな治療や検査が行えるよう、チーム医療の一員として臨床現場を支えているんです。
山:一刻を争う、というときにも力を発揮してくださる、臨床工学技士というお仕事、いろんなご苦労があるかと思いますが。
内:臨床工学技士として入ったのがもう20何年前になるんですが、当然その頃私はそれほど知識もなかったですし、動けない、ということが多々あったんです。どちらかというとまわりにいた看護師さんのほうが私よりも深い知識を持っていることが多かったんですね。だから、その方々にどのようにしてやっていったら認められるかとずっと考えながら、看護業務も一生懸命やってきたつもりですし、工学的な分野も知識を増やすのに一生懸命な最初の10年がとても大変だった記憶があります。
陶:私がH・N・メディックに入職したばかりのとき、臨床工学技士さんと看護師さんの仕事の差ってなんだろう?と思ったくらい、技師さんと看護師さんはがっちり手を取り合って、患者さんのために業務を日々全うしている姿に感銘をうけたものなのですが…そういうことだったんですね。内海さんが寄っていったわけなんですね。
内:同じ土台で頑張りたいな、と。
陶:さすがです。
山:内海さんは、どのようにして臨床工学技士を目指すようになったんでしょうか?
内:・・・あまり誇れるような理由ではなかったんですけど、もともと高校生の頃は建築士になりたくて進学するつもりだったんですが、たまたま、高校3年生のときのクラスメイトが医療系を目指す人たちが多くて。なんとなくその人たちに感化された形で、途中から医療系がいいかな・・・って。ただ、もともと工学系のことは好きだったので、何かないかと探したところ、たまたま、臨床工学技士という名前を目にして、目指してみよう、と。
陶:なんとなく察するに、「ものごとの構造」が好きなんでしょう・・か?
内:そうですね。ああいったものを、なおす、分解する、というのは好きですね。
陶:モノがどういうふうに成り立っているのに興味があって、それを自分の生業としていきたいという思いが高校3年生で芽生えたわけですか?
内:芽生えた・・・うーん、ただ実際にはじゃあ何をする職業なんだろう?というのは入ってから知っていった部分も多かったので、それほど高尚な理由ではないですが・・・
山:さて。臨床工学技士は日本に何人ぐらいいらっしゃるのでしょうか?
内:今現在臨床工学技士として働いている方は、約24,000人いるといわれています。免許取得者はこの倍はいると思われます。一見数字だけ見ると多いと感じますが、医師が約33万人、薬剤師31万人、看護師・准看護師合わせると約156万人と、比較するとかなり少ないことがわかるかと思います。男女比は、以前に比べると女性の臨床工学技士も増え、現在は3:1くらいの割合になっているといわれています。先ほども触れましたが、臨床工学技士の制度は、1987年に制定された、比較的新しい職種になります。ですので、まだまだ社会的な認知度は低いです。ですが、最近ではドラマに出てきたり、コロナ禍で聴いたことがあると思うんですが、ECMO(体外式膜型人工肺)が脚光を浴びていることや、各団体の地道な活動によって、以前よりは認知度が少しづつ上がってきているように感じます。
山:因みに、臨床工学技士になるにはどのような勉強をすればいいのでしょうか?
内:臨床工学技士になるには定められた学校、養成校や大学を卒業し、国家試験を受ける
必要があります。現在道内の養成校、大学は、5校あります。全国でみると、約85校あるそうです。国家試験の合格率は、80%前半くらいで推移しています。
令和3年の合格者の発表が3月下旬にあったのですが、今年度は2232名が合格したそうです。臨床工学技士という職業に興味を持ってもらえるよう今後も地道な活動・努力を我々はしていかなかなければならないと感じています。
陶:ということで、お時間が来てしまいました。来週は、H.Nメディックのような人工透析を行う病院で、臨床工学技士がどういう仕事をしているのか、詳しくお話していただきますよ。
山:今日は、H・N・メディックの医療技術部の部長で、臨床工学技士の内海芳淳さんに
臨床工学技士のお仕事について伺いました。
内海さん、どうもありがとうございました。
内・陶:ありがとうございました。
内:おはようございます。
山:おはようございます。
陶:内海さんは、48歳男性で「臨床工学技士」の長としてH・N・メディックで働いてくれています。臨床工学技士というのは、現代の医療に欠かせない医療機器のスペシャリストなんです。透析医療に関していえば、彼らがいないと、現実問題として我々医師は透析をすることができません。私たち医師も細かくはわからないことを臨床工学技士さんが理解して教えてくださることも沢山あるんです。内海さんはとにかく優しくて、「医師のくせにわからないなんて」なんて絶対言いません(笑)!
山:見るからにお優しそうな・・・
陶:年に1回くらい怒る・・・というくらいですね。あと、メカニック的な逸話がありまして。当院の「パルスオキシメーター」というものが壊れたことがあるんですね。パルスオキシメーターというのは指先にクリップのようにして、血中の酸素濃度をはかるものなので、精度が大事なんです。私はもうこれは使えないし直せないなと思いまして、内海さんに渡して「これ壊れたんだけど、これ捨てて新しいの買いましょうか」って言ったんですね。そうしたら内海さん、「分解していいですか?」って。
山:ブンカイですか!?
陶:そう。分解してどうするんですか?って聞いたら、「ちゃんと、こういうものの構造は知っておきたい。何かに応用できるかもしれないですかから。」って。まさにプロフェッショナルですよ。ということで、今日はそんな内海さんをお連れしました。
山:ということで、今回のテーマは?
陶:臨床工学技士とは何ぞや?というお話です。内海さん、お願いします。
内:はい。よろしくお願いします。病院の中には医師、看護師をはじめ、エックス線を扱う診療放射線技師、血液や細菌検査、心電図や脳波などの検査を行う臨床検査技師、リハビリテーションを行う理学療法士などたくさんの職種の方が働いています。このような医療従事者をメディカルスタッフと称します。臨床工学技士も病院で働くメディカルスタッフの職種で、CE(clinical-engineer)と呼ばれています。
山:臨床検査技師、という名称はよく聞きますが、臨床工学技士というお仕事は初めて
聞いたような気がします。
陶:そうですよね。医療機器は日々進歩していますし、臨床工学技士さんには工学の専門知識を活かして最新の医療機器を駆使して機器の安全確保と有効性維持の担い手としてチーム医療に貢献してもらっています。なくてなならないポジションなんです。
山:カッコいいですね・・・では、その臨床工学技士とは具体的にどのようなことをされているのでしょうか?
内:1987年に臨床工学技士法が制定されたのですが、この中で『医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作、および保守点検を行うことを業とする』と定められています。これが基本となります。
山:生命維持管理装置、ですか…
内:はい。生命維持管理装置とは、人の呼吸、循環、または代謝の機能の一部を代替することが目的とされる装置と定義されていて、具体的には、人工心肺装置や血液浄化装置(これが透析の機械ですね)、ペースメーカーや大動脈バルーンパンピング装置、人工呼吸器、除細動装置などになります。
陶:物騒な感じの言葉がたくさん並んだと思うんですけど、生命維持管理装置、要は無いと死んじゃうような、これがあるから生きていられる状態を生み出すことができる機械なんですよね。そういったことを専門にやるということで、人の命に近いところにいる瞬間も多いかもしれません。
内:制度が施行され30年あまりたった今では、実際に操作する医療機器や保守点検を行う医療機器は多岐にわたります。そのほかにも、高気圧酸素治療機、心臓カテーテル治療にかかわる機器や、内視鏡、電気メス、輸液ポンプ、シリンジポンプ、と、これらは、勤務する病院や診療科によって従事する内容が変わってきます。
山:人工透析を行う陶子先生の病院では、本当に欠かせないお仕事ですよね。まさに命を支える機器ばかりですもんね。
陶:冒頭に私が「臨床工学技士さんがいないと何もできません」と言ったのはまさしくこのことで、医療技術の進歩にともなって医療機器の性能は日々高度に、そして複雑になっています。内海さんのような臨床工学技士はさまざまな医療機器に関する知識を持って、スムーズな治療や検査が行えるよう、チーム医療の一員として臨床現場を支えているんです。
山:一刻を争う、というときにも力を発揮してくださる、臨床工学技士というお仕事、いろんなご苦労があるかと思いますが。
内:臨床工学技士として入ったのがもう20何年前になるんですが、当然その頃私はそれほど知識もなかったですし、動けない、ということが多々あったんです。どちらかというとまわりにいた看護師さんのほうが私よりも深い知識を持っていることが多かったんですね。だから、その方々にどのようにしてやっていったら認められるかとずっと考えながら、看護業務も一生懸命やってきたつもりですし、工学的な分野も知識を増やすのに一生懸命な最初の10年がとても大変だった記憶があります。
陶:私がH・N・メディックに入職したばかりのとき、臨床工学技士さんと看護師さんの仕事の差ってなんだろう?と思ったくらい、技師さんと看護師さんはがっちり手を取り合って、患者さんのために業務を日々全うしている姿に感銘をうけたものなのですが…そういうことだったんですね。内海さんが寄っていったわけなんですね。
内:同じ土台で頑張りたいな、と。
陶:さすがです。
山:内海さんは、どのようにして臨床工学技士を目指すようになったんでしょうか?
内:・・・あまり誇れるような理由ではなかったんですけど、もともと高校生の頃は建築士になりたくて進学するつもりだったんですが、たまたま、高校3年生のときのクラスメイトが医療系を目指す人たちが多くて。なんとなくその人たちに感化された形で、途中から医療系がいいかな・・・って。ただ、もともと工学系のことは好きだったので、何かないかと探したところ、たまたま、臨床工学技士という名前を目にして、目指してみよう、と。
陶:なんとなく察するに、「ものごとの構造」が好きなんでしょう・・か?
内:そうですね。ああいったものを、なおす、分解する、というのは好きですね。
陶:モノがどういうふうに成り立っているのに興味があって、それを自分の生業としていきたいという思いが高校3年生で芽生えたわけですか?
内:芽生えた・・・うーん、ただ実際にはじゃあ何をする職業なんだろう?というのは入ってから知っていった部分も多かったので、それほど高尚な理由ではないですが・・・
山:さて。臨床工学技士は日本に何人ぐらいいらっしゃるのでしょうか?
内:今現在臨床工学技士として働いている方は、約24,000人いるといわれています。免許取得者はこの倍はいると思われます。一見数字だけ見ると多いと感じますが、医師が約33万人、薬剤師31万人、看護師・准看護師合わせると約156万人と、比較するとかなり少ないことがわかるかと思います。男女比は、以前に比べると女性の臨床工学技士も増え、現在は3:1くらいの割合になっているといわれています。先ほども触れましたが、臨床工学技士の制度は、1987年に制定された、比較的新しい職種になります。ですので、まだまだ社会的な認知度は低いです。ですが、最近ではドラマに出てきたり、コロナ禍で聴いたことがあると思うんですが、ECMO(体外式膜型人工肺)が脚光を浴びていることや、各団体の地道な活動によって、以前よりは認知度が少しづつ上がってきているように感じます。
山:因みに、臨床工学技士になるにはどのような勉強をすればいいのでしょうか?
内:臨床工学技士になるには定められた学校、養成校や大学を卒業し、国家試験を受ける
必要があります。現在道内の養成校、大学は、5校あります。全国でみると、約85校あるそうです。国家試験の合格率は、80%前半くらいで推移しています。
令和3年の合格者の発表が3月下旬にあったのですが、今年度は2232名が合格したそうです。臨床工学技士という職業に興味を持ってもらえるよう今後も地道な活動・努力を我々はしていかなかなければならないと感じています。
陶:ということで、お時間が来てしまいました。来週は、H.Nメディックのような人工透析を行う病院で、臨床工学技士がどういう仕事をしているのか、詳しくお話していただきますよ。
山:今日は、H・N・メディックの医療技術部の部長で、臨床工学技士の内海芳淳さんに
臨床工学技士のお仕事について伺いました。
内海さん、どうもありがとうございました。
内・陶:ありがとうございました。